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ソードアート・オンライン〈3〉フェアリィ・ダンス [小説]


ソードアート・オンライン〈3〉フェアリィ・ダンス (電撃文庫)

ソードアート・オンライン〈3〉フェアリィ・ダンス (電撃文庫)

  • 作者: 川原 礫
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/12/10
  • メディア: 文庫


発達したMMORPGの世界を舞台とした本シリーズ,第3巻。第2巻が第1巻を補完する内容だったのに対し,本巻は純粋に第1巻の続編という位置付けです。しかしながら,主要な登場人物の一人「ユイ」の設定や,今巻のメインヒロインに据えられている主人公の妹「直葉」についてなど,当然ですが第2巻を既読であることが前提として描かれています。
また,本作は基本的に主人公「キリト」視点で描かれてきたのですが,今巻は殆どが「直葉」視点。キリトくんは強すぎるから,物語にアクセントを持たせるためにはちょっと下から見上げるくらいが読んでいる方も盛り上がりますよね。

さて,では以下は,例によってネタバレ注意でお願いいたします。

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シュガーダーク 埋められた闇と少女 [小説]

年末が近づくにつれ飲む機会も増えてきて,ネット接続の時間が限られる今日この頃。一方,電車による通勤とならざるを得ず,いつもなら不可能な「通勤時間中の読書」というものが可能になり,これを読み終えました。

シュガーダーク  埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)

シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 新井 円侍
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2009/11/28
  • メディア: 文庫


新井円侍先生による,「シュガーダーク 埋められた闇と少女」。
ハルヒ以来6年振りとなる「スニーカー大賞」大賞受賞作品として,世間に名を馳せた当作品。ここまで盛り上げられれば読まないわけにはいかず,読んでみましたとも!

率直な感想として,満足度は高いと思いました。事実ストーリー設定は面白かったし,物語の密度は濃い。キャラ設定もよかったし,伏線の張り方もそうそう複雑ではなく理解し易いです。文章の構成も,やや荒削りで読み返すことが数度ありましたが,おしなべてスラスラと読み易く,幾度か登場する過去の反芻シーンへの繋ぎも上手くスッと入っていけました。
「スニーカー大賞」というのがどれほどの権威を持つ賞なのか存じ上げなくて大変失礼致しますが,私としてはこの作品と出会うきっかけを作って下さった本賞に,感謝してやみません。

さて,本作のレビューをしたく思いますが,前述の通り物語の密度が濃くちょっと書くと容易に物語の核心に触れるため,以下はネタバレ注意にてよろしくお願いします。

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空ろの箱と零のマリア〈2〉 [小説]


空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫)

空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫)

  • 作者: 御影 瑛路
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫


御影瑛路先生作「空ろの箱と零のマリア」,第2巻。
今回のテーマは,二重人格? 主人公「星野一輝」に,「箱」の所有者の願いによってもう一つの人格が宿ってしまう,一輝としては何ともやりようのない設定です。しかも日を追う毎に自分でいられる時間を奪われ,1週間後には完全に身体を乗っ取られてしまう,という。
更に,もう一つの人格が活動中は一輝の意識はなく,自分が何も知らないうちに自分の身体を使って他人に危害を加えられているという,「日常」を愛する一輝でなくても絶望するに難くない状況です。
自分の中に,自分と敵対する人格が存在している。考えると,なんとも戦慄に堪えない設定ではないでしょうか。

多重人格のお話は,基本的に嫌いじゃありません。「ビリー・ミリガン」や「シビル」など有名どころは読んでいますし,その現象には大変興味があります。
あるタイミングや外的要因がきっかけで,まったく別の人格に入れ替わり,性格はもちろん,表情やしゃべり方,利き腕や筆跡,性別までが入れ替わってしまう。客観的にはとても奇妙で,とても興味深い。
しかし,当事者は大変な苦労を強いられるでしょう。本作「空ろの箱と零のマリア」は,基本的に主人公一輝の一人称で語られ,この事象に気付き始めたときの一輝の戸惑いや動揺といった感情の描き方も上手く,自ずと物語に引きずり込まれてしまいます。

今回もまた,作者様の巧妙な伏線の罠は健在です。「え,違うの?」「やっぱりそうだったか!」「あれ,こっちか?」を繰り返しながら物語は流転し,進行します。

本作は,作品の性質上凄惨な描写が多いですが,加害者には加害者たるの所以があり,悪者が絶対的悪で終わらないので,読み終わった後味が悪くないと言いますか,そういうところも本シリーズが好きな理由です。

今回は,ラストのラストでレギュラーキャラの一人から衝撃の告白がなされ,第3巻の展開がまた楽しみなものとなっています。作者の御影瑛路先生も,後書きで「3巻はもっと複雑になりそうで大変」とおっしゃっており,今から心待ちにしているところです^^


…そう言えば10年以上前かな,「多重人格者」の方が書いているというメルマガがあって,好きで愛読していたものですが,いつの間にか終わっていてサイトも閉鎖していました。彼女も,本来の人格のほかに男性の人格と女性の人格をそれぞれ2人くらいずつ宿しており,それぞれが書く日記形式の記録がとても面白かったのです。サイトのキリ番などゲットして,人格者の一人が編集してくれたテープなんか貰ったっけ。
今,どうしていらしゃるのかなぁ。

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アクセル・ワールド〈3〉夕闇の略奪者 [小説]


アクセル・ワールド〈3〉夕闇の略奪者 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈3〉夕闇の略奪者 (電撃文庫)

  • 作者: 川原 礫
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/10/10
  • メディア: 文庫


3巻目に突入し,物語も転機に入ったかと思わせる今作。メインヒロイン「黒雪姫」の出番が修学旅行という形で抑えられ,その一方で主人公ハルユキ及び親友タクムの共通の幼馴染みであるチユリが「ブレインバースト」をインストールするところから,今回の物語は始まります。

今作は,色んな意味で転機。
悪役の登場,しかもそれは組織?「ボクら」という呼称から,一人ではないのでしょう。
そして,新システムの登場。これの扱いは,今後難しそうです。我々読者に与えた衝撃も相当ですが,これは作者様の力量を問われるところでしょう。もちろん勝算があってのことでしょうが。

例によってネタバレを含むので,ちょっと改行します。
また,いろんなレビュアーさんがおっしゃるとおり,今巻は続き物の前編で,決して気持ちのいい終わり方をしていません。作者の川原礫先生はいずれハッピーエンドがお好きな方だとお見受けするので,後編が出てから一気に読む,という手もアリだと思います。
あのまま引きずられていったらどうしよう,という心配はもちろんあるのですが^^;

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空ろの箱と零のマリア [小説]

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いやぁ,久しぶりに小説を読み終えました~。
御影瑛路先生作,「空ろの箱と零のマリア」です。買ったきっかけは,本屋で表紙に惹かれて,だった気がします。そう考えると,表紙とか挿絵とかって決しておろそかにすべき物ではなく,「作品の一部」として重要視すべきものだと思います。御影瑛路先生が後書きでおっしゃるように,目に飛び込む印象とは大変に大きなものです。

さて,本書は現時点ですでに第2巻が発売されておりますが,私はまだ未読。その為というか,作品を通してのテーマはまだ把握できておりません。しかしながら,第1巻の主題は明らかに「時間ループもの」。永遠とも思われる回数,特定の一日を繰り返す中で,それでも少しずつ違う「3月2日」を描いた物語です。

さて,「時間ループもの」といってまず思い出すのが,涼宮ハルヒシリーズ「エンドレスエイト」ではないでしょうか。「エンドレスエイト」では,8月17日から8月31日の2週間を15,498回も繰り返すお話。劇中で古泉が「自分がそんなループに囚われていると自覚して,記憶がそのまま蓄積するのだとしたら,通常の人間の精神では持たないでしょう」と言っているように,「箱」の「犯人」は積み重ねられた27,755回の時間の中で,いろいろなものを失っている。その点,ちょっと退屈さが加わっただけで何らの影響を受けない長門さんは,さすがと言うべきでしょう(笑

私はこれを読んでいる途中,3度…いや,4度かな? ストーリー中に巧妙に鏤められたギミックに騙されました。しかし,それは決して不快な物ではなく,怒濤のように展開していく時間ループの渦に飲み込まれ,後半「箱」の「犯人」の意思が明確になり始めるあたりから,続きが気になって一息に読み進めてしまったほどです。
是非ともこの感覚を味わって欲しいので,ストーリーの核心に触れる部分は控えます。
「エンドレスエイト」などに比べると若干猟奇的な描写があり,読み手を選ぶかも知れませんが,「時間ループ」の罠の特性を巧妙に操った,よく練られたとても優れた小説だと思います。

第1巻は,「箱」の所有者がそう望んだために「時間ループ」となりましたが,こういう設定だと2巻以降ははまた違った展開となりそうです。今度はどのようなトリックを仕掛けてくれるのか。すでに第2巻も入手済みですので,作者様の挑戦を受ける準備は出来ていますともw


空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫)

空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫)

  • 作者: 御影 瑛路
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫



空ろの箱と零(ゼロ)のマリア (電撃文庫)

空ろの箱と零(ゼロ)のマリア (電撃文庫)

  • 作者: 御影 瑛路
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/01/07
  • メディア: 文庫



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ソードアートオンライン2 アインクラッド [小説]

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さてさて,やることいっぱいで特に進まない本の消化。そんな中,やっと「ソードアートオンライン2 アインクラッド」を読み終えたので,これについてレポートです。

前回で,ひとまずの終焉を迎えて,第2巻はどうするのかな~と思っていた本作品。今回は,第1巻の外伝風と言いましょうか,第1巻で描かれなかった部分を補完する4つのエピソードから成り立っています。
なるほど,最初にエンディングを見せておいて,それに至る過程を追記するとは…。続編小説としては,とても難易度の高い書き方ではないかと思います。後から綴られる物語が,ストーリー上では過去のものである以上,最初に自ら嵌めた枷を取り去ることはできない。何せ終わりはもう決まっており,それを大きく外れる要素を追加できないだけでなく,一層高まる読者の期待には応えなければならないのです。以降もこうした形で,巻を重ねていくのかな?


さて,中身に入りましょう。
各話にはそれぞれ異なるヒロインが据えられ,彼女たちと主人公キリト並びにメインヒロインであるアスナとの関わりが綴られる形。「女性の絶対数がそもそも少ないMMOにおいて,美少女は更に少ない」という設定の割に,ばんばん美少女が出てきますw まぁいいじゃないですか,小説なんだから^^

最初の話は,「ビーストテイマー」というレアな属性を持つ少女シリカの物語。冒頭,いきなりビーストテイマーの胆とも言うべき使い魔を失うところから始まって,これを蘇生させるためにキリトと旅するお話です。
今作中のストーリーはどれもそうですが,キリトくん強すぎですねw しかも,モテ過ぎww いいですねぇ,嫌いじゃないですよ,他の追随を許さぬその圧倒的パワー。
今巻は,キリトに憧れる少女達の内面が綿密に描かれるばかりでなく,キリトやアスナの心情などについても語られ,色んな意味で1巻を補完する内容となっています。

2話目は,「鍛冶屋」リズベットが,キリトとともに武器の材料を取りに行くお話です。
キリトの持つ2本の剣,うち一本の誕生秘話。「ソードアートオンライン」という仮想世界における「人」の温もりと,また,リズベットをアスナの親友に据え,キリトへの思慕とアスナとの友情との境で揺れる想いとが丁寧に描かれていて,今作中最も気に入っているストーリーとなっています。

3話目は,謎の少女ユイの物語。今作中唯一の,アスナ視点のストーリーです。注目すべきは,アスナがこの世界に来る前の生活様式や,この世界に引きずり込まれて以降キリトに出会うまでの間,彼女が抱えていた狂気の感情について触れられており,ヒロイン「アスナ」を理解するうえで重要なストーリーと言えるでしょう。
また,「ソードアートオンライン」のメインシステムに関する記載も興味深く,何かと知識欲を満たしてくれたセクションでした。

最後は,「ソードアートオンライン」におけるキリト最大のトラウマとなった,「ギルド全滅事件」に纏わるお話。前作からキリトを苦しめ続けていた事件の終始が語られる,とても興味深いストーリーです。
また,なりふり構わず蘇生アイテムに挑むキリトの姿,その次に来る絶望,そして亡き人からのレクイエム。思わず目頭が熱くなる,ラストを飾るに相応しいとても素晴らしいお話でした。


作者,川原礫さんの次の刊行は,「アクセル・ワールド3」10月10日発売予定。
「ソードアートオンライン」3巻も,晩冬発売予定とのこと。

いずれの物語もどのような展開を見せるのか,今からとても楽しみです^^


ソードアート・オンライン〈2〉アインクラッド (電撃文庫)

ソードアート・オンライン〈2〉アインクラッド (電撃文庫)

  • 作者: 川原 礫
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/08/10
  • メディア: 文庫



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ソードアートオンライン1 アインクラッド [小説]

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アクセル・ワールド」を,大いに気に入った私。同じ作者様「川原礫さん」の作品に興味がわいて,「ソードアートオンライン1 アインクラッド」を読み始めました。

これ,一言で言うと,「MMORPG内に生きるゲーマー達の物語」です。ただし,MMORPGと言ってもFF11の様にディスプレイを前にキーボードやコントローラーを操作するのではなく,頭に被った「ナーヴギア」と呼ばれるインターフェイスが脳波を読み取ることによって仮想世界の分身を操作することにより,「完全なるバーチャル・リアリティを実現した」という仕様。

ところが,制作者の仕掛けた罠によってこの世界からログアウトできなくなったばかりか,外的要因によってナーヴギアが強制除去されたり,ゲーム内でゲームオーバーしたりすると,プレイヤーが実際に命を落とすという…。そして現実世界に戻るためには,ラスボスを倒すしか方法がない。

ここいら辺からの設定の細かさが,川原礫さんの作品の魅力の一つだと思います。ゲームに限らず我々を取り巻くコンピューター世界はいずれ5感のすべてを数値化するでしょうし,ゲームは仮想世界にどんどんシフトして行くでしょう。
また,MMORPGはFF11しかプレイしたことがない私ではありますが,ゲームとしてのお約束ごとやファンタジー世界の法則などがきめ細かく練り込まれていて,「こういうゲーム,実際にアリだなぁ」と思いました。


本編は,MMORPGならではの人間同士の確執やPK行為,ベータテスター出身である主人公の苦悩や葛藤など,その内容は色濃く奥深いです。それに加えて,可憐なヒロイン「アスナ」の関わりが本作に喩えようもない華を添え,作品の魅力を押し上げています。
彼女が主人公に惹かれるくだりは,私としては「アクセル・ワールド」の黒雪姫のそれよりも,随分と納得の行くものでした。
また,「魔法」の存在のない「ソードアートオンライン」の世界に於いて,彼女が唯一魔法のユニークスキルを習得するのではないかと思っていたんですけどね(笑


この作品を読みながら常に感じていたのは,「羨ましい」という思いです。別に美人のヒロインと仲良くなることがじゃなくて,こういう世界に没頭できることが,純粋に羨ましかった。
FF11の時も,リアルの事情が許さなくて,ランク6になったことを期にやめちゃいましたしね。もう5年以上になるのか…。本編に登場する「ニシダ」が語るセリフが,身につまされて理解できたものです。


本作品,「ソードアートオンライン1」というタイトルから,「アインクラッド」を完全攻略するまで続くのかと思っていたのですが,この1巻で物語は一応完結しています。
それでは,この続きはどうするのか。設定はそのままに,まったく新しい世界に新しい主人公とヒロインを据えて始めるのか。第1巻が秀逸だっただけに,興味は尽きません。


ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)

ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)

  • 作者: 川原 礫
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/04/10
  • メディア: 文庫



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アクセル・ワールド(II) [小説]

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私事ですが,週末に掛けて仕事の都合で出張していたため,当ブログへアクセスすることができませんで。
一方,時間はそれなりに有ったため,「アクセル・ワールド」第2巻を読破しましたのでそのレビューを。


尾崎豊も「俺,ファーストアルバムを超えられないよ」と言ったが如く,ある程度思うが儘に筆を振るえた第1巻と比べ,やや枷を嵌められた印象があります。
が,それはやむを得ないこと。「継続する」ということは,自ら枷を嵌め続けることです。物語を面白くするには,やっぱり主人公なりヒロインなりが一度はピンチに陥らなければ盛り上がらない部分があるわけで,ピンチに貶めるためには,ヒロイン等は完全無欠の存在であってはならないのです。
第2巻にして当物語のヒロイン「黒雪姫」を2度(あるいは3度)にわたりピンチたらしめた作者様は,理想像的ヒロインを9割方ならず9割5分方,肉体的にも精神的にも痛めつけ,しかしながらその高潔なる精神は侵されざるまま保つことで,我々読者をヒロイン「黒雪姫」の魅力の虜たらんとしているかのようです。
今後も黒雪姫は,あたかも地を這うような屈辱的立場に置かれながらもあくまで美しく高潔なヒロインとして描かれていく,そんな気がしてなりません。
…この描かれ方,誰かに似てる…と思ったら,999のメーテルと被りませんか? そう感じるのは私だけ?^^;


さて,今回のテーマは「親と子」。
この作品で言う「親と子」とは2種類の意味があり,一つは純粋な遺伝子的意味を持つ「親子」。
もう一つは,ブレイン・バーストをコピーインストールした「コピー元」と「コピー先」,です。
本作の鍵である「ブレイン・バースト」なるアプリケーションは,ハードウェア「ニューロリンカー」を直接接続することでしかコピーできない仕様となっています。それは畢竟,「コピー元」と「コピー先」はリアル世界で面識ある人物同士であることを意味し,そのことがバーストリンカー同士の絆となっている。

今回の物語でゲストヒロインを務める「赤の王」ことニコは,狂える「親」との「親子」の絆と枷との狭間に苦しみ,最終的には「親」を加速世界から抹消する決意をします。
「親」と,「親」を超える力を身につけた「子」との確執。リアルのお互いを知るが故の,やりきれない想い。
黒雪姫とハルユキくんも,同様に「親と子」でありますが,第一巻で描かれている通り黒雪姫は自分を踏み台にしてハルユキくんに頂点を目指して欲しいと願っており,ニコには二人の絆が眩しく映ったようです。

また,この巻で,黒雪姫にも「親」が居ることが明らかにされました。どうやらこちらは,「呪い」とまで表現される確執があるようで,いずれ続巻で描かれることとなるのでしょう。

今回,特筆すべきは,ニコのキャラクター。その凄まじい荒武者ぶりは,暴風姫の名の示すとおり…ある意味,エヴァのアスカ嬢を凌駕するかも^^;
また,様々な場面で彼女と対峙し張り合う黒雪姫の雄姿も,今巻の見どころと言えるでしょう。


黒雪姫といえば,相変わらず名台詞の多い彼女ですが,今巻で最も印象深かった台詞がこれです。

「私はキミを待たせるよりも待つほうが好きだ。」

いつものようにラウンジでハルユキくんを待っていた彼女が,ハルユキくんに対してさらりと言い放つ一言ですが,不思議と彼女の様々な心情を,この一言が表現しているように思えてなりません。


さて,今回の一件で,強力な身方を得たハルユキくんたち。今後,物語はどういった方向へ向かうのか。
いずれにせよ,作者の川原礫さん,物語がどのような過程を経たとしても,最終的にはハッピーエンドがお好きな方だとお見受けします。
どのようなストーリーで,私たちを楽しませてくれるのか。やっぱり「次が読みたい」と,私は思います。


アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

  • 作者: 川原 礫
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/06/10
  • メディア: 文庫



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アクセル・ワールド [小説]

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当ブログのサイドバーには,「Amazonおまかせリンク」というブログパーツを設置させていただいています。
これ,「メンバーそれぞれのWebサイトに適した商品を自動的に表示する」というものですが,当ブログのどんなキーワードから適合したものか,「アクセル・ワールド」なる作品をヒットさせました。

表紙に惹かれ,ついついクリック。例によって,気が付いたら購入ボタンを押していた始末です(爆
衝動買いの癖だけは,一生治りそうにありません…。


さて,出張先までの電車の中などで,つれづれと読み始めた本作。読み始まったら,すぐに物語に引き込まれ,仮眠を取るのも忘れて読み耽ってしまいました。
そして本作のレビューを書き始めたところ,ついつい止まらなくなり,昨日のアップに間に合わないという事態にw 2日分の長文のうえ,ネタバレを多分に含みますが,これも本作を愛するあまりの愚行とお笑い下さい。


時代は近未来。脳と量子無線接続し,あらゆる五感をサポートする携帯端末「ニューロリンカー」により,生活の半分が仮想ネットワーク上で行われるようになっている世界が舞台背景です。
すでに仮想世界だけで生活している大人も少なくないこの世界,未だ子供達は「集団生活を学び,情操を育てるため」,中学生の主人公「ハルユキ」くんは,重苦しい気持ちを引きずって中学校に通っている…。
どんなに時代が進んでも,「イジメ」はなくならない。小太りで内向的なハルユキくん,実はいじめられっ子でした。そんな彼が心安らげる数少ない場所の一つが,学校ローカルネットにフルダイブしてプレイする「バーチャル・スカッシュ・ゲーム」。
誰もプレイしない地味なゲームで,今日も時間を潰すハルユキくん。入学間もない頃から延々プレイし続けてきた彼のスコアは既に尋常ではなく,そのゲームスピードは極限に達している。
そう,昔からゲームが得意だった彼ですが,その脳神経反応速度は常人のそれではなかったのです。それが校内一の美少女「黒雪姫」の目にとまり,高嶺の花である存在の彼女からアクセスされ,「ブレイン・バースト」という名のアプリケーションをそのニューロリンカーにインストールされます。そして,彼の生活を一変する世界への扉を開くのでした。

「ブレイン・バースト」を持つ者は,一定時間,限られた回数だけ思考速度が千倍になる,とても強い力を得ます。そして,その使用回数を増やすためには,同じく「ブレイン・バースト」を持つ者と対戦し,勝たなければならない。
この「対戦」とは,「ブレイン・バースト」プログラム内に於いて己の深層心理から生成された己の分身「デュエルアバター」を駈り,一対一の対戦格闘に拠ります。勝てば加速できるポイントをゲットし,負ければ失う。このポイントを獲得するため,「ブレイン・バースト」を持つ者「バーストリンカー」達は戦い続ける。
「黒雪姫」もすでに6年前からバーストリンカーであったのですが,ある事件から今はデュエルアバターを封印しているようです。これに起因して課された賞金により黒雪姫はあるバーストリンカーから狙われており,これを回避するために彼女はハルユキくんの力を頼ろうとしたのですが,「バーチャル・スカッシュ・ゲーム」をプレイする彼を見て,戦慄します。「人は,これほど速くなれるのか。」


この物語のテーマは,タイトルにもあるとおり「加速」です。
物語は常に伏線を孕んで進行し,綺麗に次のステップにつながり,そして加速度的に読者を物語の世界に引き込んでいきます。ダン・ブラウンあたりの手法と重なる気がしますがあれほど難解ではなく,伏線の答えも比較的早めに得られ,スラスラと読みやすいのでついつい先を読み進んでしまいます。結局,ものの半日もしないうちに,最後まで一気に読み終えてしまいました。

面白かったし,全体として満足なのですが,黒雪姫がハルユキくんに惹かれていく過程は,続巻以降でもう少し丁寧にゆっくりと描いてもよかったのでは,という気がしています。バーストリンカーの彼女ですから,そうした気持ちの展開も速いのかも知れませんが,あの告白は無くてもよかったんじゃないかなぁ。

また一方,ハルユキくんは脳神経反応速度に優れるだけあって,頭の回転が速すぎるのでしょうか。黒雪姫の話を即座に理解するばかりでなく,彼女のジェラシーを勘違いし,加速度的に曲解して,彼女の心を苦しめる。これを理解して貰うために黒雪姫は無茶な行動に出て大怪我し,またこれがクライマックスのデュエルへと流れていきます。

クライマックスの戦闘は,いやぁ萌えました。特段の能力を持たないと思われていたハルユキくんのアバター「シルバークロウ」ですが,黒雪姫のピンチに際して格上の相手と対峙し,秘められた力を覚醒するシルバークロウ。その力は,これまでどんなデュエルアバターも持ち得なかった能力でした。
力を駆使し,劣勢を覆すシルバークロウ。ようやっと相手を説き伏せたその時,黒雪姫のデュエルアバターが真の姿を現します。

そして物語は,いくつかの謎を残して続巻へと続く…。
デュエルアバターが所持者の劣等感を濾し取って造られるとすれば,黒雪姫のアバター「ブラック・ロータス」の,痛々しいまでに攻撃的な外観の意味するところは何なのか?
そもそも,「ブレイン・バースト」とは?
そして,黒雪姫の本名はw?


設定が綿密でよく練られており,対戦格闘,RPG,MMOなどが好きな人はとても気に入ると思います。
また,いじめられっ子の主人公が全校生徒の羨望である美少女に言い寄られるばかりでなく,サブヒロインである幼なじみもまた黒雪姫ともども主人公の外観を気にせず中身に惹かれているなど,ある種夢のような描写が種々見られます。いいじゃないですか,小説なんだから^^

既に第2巻も,購入ボタンをクリックしてしまいました。楽しみだ…^^


アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

  • 作者: 川原 礫
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 文庫



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